INTERVIEW Vol.03

GROOVE Xってどんな会社?

林要 Kaname Hayashi(FOUNDER/CEO)

アイディアが
グルーヴする会議を

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これまで「GROOVE Xがどんなロボットを作ろうとしているのか」を聞いてきましたが、「そもそもどんな会社なのか?」について興味を持つ人も多いようです。まずは社名にも関係しているという、ユニークな会議について教えて下さい。

林:会議って意外と面白いよね、つまらない会議を減らしましょう、というのがそもそもの出発点にあります。GROOVE Xの会議では、誰かがポロッと出したアイディアが、必ずしも論理的なつながりではなく、他の人のアイディアを誘発するということを大事にしています。プロダクトのロボットについても「無意識」というテーマを大きく取り上げてきましたが、会議でも「無意識」の領域を尊重しているとも言えます。

意識的な論理の積み重ねで会議が進むのではなく、「あ、そういや僕も」みたいにピンピンとくるひらめきで進んでいく。そのひらめきの連鎖、グルーヴ感を求めて会社を起こしました。ですから当初は社名も「GROOVE IDEAS」にしようと考えていました。ただ社名には少々長過ぎるということと、アイディア以外のものもグルーヴするといいね、ということで「IDEAS」を変数「X」に置き換えて社名としたという経緯があります。

「つまらない会議」との違いはどこにあるのでしょうか。

林:つまらない会議の特徴は、意見のぶつけ合いより、コンセンサスを取る事を目的としていることです。大会社でありがちなこととして、多くの会議において、決定権者全員がNoとは言わない結論が最初から決まっていて、それがしかるべきプロセスで承認されたという事実を作る事を目的として会議が行われています。いかにスムーズに結論に落とし込むのかという目的で会議資料を準備して、参加者の「ご承認をいただく」。そこに時間をかけている事が大変多い。それでは単なる承認プロセスにすぎないので、単純な失敗は減るかも知れませんが、生産性はあがりません。当然、創造力を刺激しあうというプロセスより、上位の意向を慮る事にリソースが割かれ、構造的に新しい事が出る土壌も醸成されず、みんな会議のことを面白くないと思ってしまいます。それはそれで必要悪として一部あるんでしょうけれども、人の創造力を最大限発揮するという意味での生産的な会議としては、あるべき姿ではありません。

GROOVE Xの会議では、最初と最後で、当初の期待と全然違う落としどころにいくこともよくありますし、そんな時ほどエキサイティングなんです。もちろん、参加者はみんなそれぞれに十分に考えて準備して来るのですが、そのアイディアに刺激を受けて誰かが他のアイディアを出してきます。必ずしも全てが合理的なアイディアでは無いのですが、そのアイディアすら、次のアイディアを誘発するキッカケになります。いわば思いつきに過ぎないアイディアですら、センスが良ければ誰かの次のアイディアの種になる。外れることを恐れずに言っていくことによって、誰かが引っかかってさらに先に進む。そういう連鎖をいかに作るのかがキーだと思います。

具体的な会議風景はどのようなものですか?

林:週に1回、「デザイン定例会議」というものを開いています。社員とプロジェクトに関わっている外部スタッフさんが全員参加する会議です。私どものプロダクトの場合、ありとあらゆるユーザーエクスペリエンスを設計(デザイン)していく事が大事な事で、それをみんなで決める場です。例えば、センサーひとつとってもそれを機械として性能を満足しながら、人にとって違和感の無い美しい配置をしなくてはなりませんし、ある動きを実現するためには内部構造から指示系統、そしてもちろん外観や素材まで考えなくてはなりません。

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DMM.make AKIBAのジャッジルーム

この会議はいつも何か新しい事が見られるので、みんな会議を楽しみにして待っています。それぞれが持ち寄るもので自発的に盛り上がるので「会議という名前のエンタテインメント」という理想を少しは実現できてるんじゃないかな、と思っています。現在は、GROOVE Xが入居しているDMM.make AKIBAの「ジャッジルーム」と呼ばれるミーティングルームを使っていますが、これもいい効果を上げているようです。円卓状のテーブルがあって、インテリアも独特で、ちょっと個性的な空間です。

ホワイトボードを使い出すともはや止まらないという感じで、毎回結構な議論があります。ソフトウェアエンジニアもハードウェアエンジニアも一緒になって意見を出し合うというのが特徴かもしれません。

百戦錬磨のプロが
力を発揮できる環境

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外部からのスタッフはどういう人たちですか?

林:デザイン会社、玩具会社、乗り物など、業種も職種も多様で、必ずしもロボットをやっていた人とは限りません。エレクトロニクス、機械学習、バックエンド、プラットフォームなど、それぞれの専門家が集まっています。もちろんNDAは書いていただきますが、機密だからといって人を排除していたら今の環境はありません。ある程度の人の出入りに伴うリスクを負うことで、機密管理の厳しいメーカーではできないようなスピード感で進行できていると思います。

そういえば、つい先日、ある製品のメーカーさんが自社製品のプレゼンテーションに来てくださったんですが、そのメーカーさんの孫請け(下請けの更に下請け)の会社がアウトソースしていたフリーランスのエンジニアがうちにいて、「ああ、それ僕がつくりました」みたいなこともありました。つまり、そのような請負仕事を山のようにこなしてきた職人のような方々が、面白がってここに集まってきてくれていますね。

みなさん苦労人ですから、一つや二つのトラブルがあっても、議論で対立しても、動じるどころか、むしろ楽しんでしまいます。私が妥協点を探ろうとすると、「林さんに『こうした方が楽だから』と言う理由でモノを決めてほしくない」なんてにこやかに言い放ったりします。その結果、言った本人は休日を返上して大変な作業をすることになるんですが、それでも、楽な落とし所などではなく本質をつきつめたいというのです。私は事業を成功させるというミッションを負っているので、どこかの時点で落とし所を見つけなくてはならないんですが、それでも、そういうハイレベルでの議論ができて、更にバランスを取れる人がいるのがありがたいですね。

外部の方は最初のうち、それぞれの仕事をお持ちですから、時間を調整しながら参加してくださるんですが、みなさん「どうせやるなら世の中を変える物をつくりたい」と考えていますから、そのうちに「これなら世界を変えられそうだ」という感触を得ると、興奮して結果的にフルタイムでコミットしてくれるようになっています。中には決断してGROOVE Xのメンバーになった人もいます。デザイン定例会議のメンバーもそんな風にしてだんだん定着してきました。

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プレゼンテーションするメンバー

百戦錬磨の錚々たるメンバーを束ねるのは大変ではありませんか?

林:こちらで決めるのはスケジュールだけです。私は会社を回す立場でもあるので、「いついつまでに何を出してください」ということだけはお願いして納得していただきますが、実力のある役者が揃うと、一旦納得した後のコミット力が極めて高い。結果として何かしらのモノが期限に出てきて、それをみんなで確認するわけです。

実は、この「モノが出てくる」ということがすごく肝心なんです。プロジェクトメンバーがどうやってモチベーションを上げ続けるかというのは、もっとも大事な問題の一つです。通常は「売り上げが会社の全てを癒す」などと言われています。仕事が大変でもその分ちゃんと売り上げがあれば癒される。ところがGROOVE Xは当面、売り上げはありません。

その状態でどうやってモチベートしていくかについて、私も当初あまり見えていませんでしたが、実はプロダクトの試作品や、3DCGのイメージなどの具体的な物が出てくると、みんな気持ちが上がるんです。ですからデザイン定例会議には、何かを決めるという役割もありますが、定期的に物が出てきてみんなのモチベーションが上がる場所だということが、経営者目線では一番大事だったりもします。

素人の目線が
プロの脳を刺激する

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私も参加させていただきましたが、確かに面白かったです。どうすれば「デザイン定例会議」のような面白い会議ができるのでしょう?

林:その道の専門家が同類の専門家とその分野の言葉で話をするのではなく、素人の素朴な目線と専門家の知識がお互い刺激しあって、何かを作っていくようなプロセスが大事かなと考えています。当然、取捨選択して最後に責任を持つのはプロとしての専門家であるべきですが、そこに至るまでの過程で、専門家が出した提案に対して素人が素人臭く答えて、それによって「一般のユーザーはそう感じるのか」と気づいた専門家の脳が刺激されるというプロセスがぐるぐる回っていくのが理想的だと思います。

そもそも私がなにぶん素人っぽい。弊社でも、最初の頃は多少遠慮があった人もいたかもしれませんが、私が素人目線で他人の領域にずかずか踏み込んでものを言うので、少しづつみんな安心して発言するようになった気がします。Pepperの開発でも経験しましたが、開発プロセスの途中では、メンバーそれぞれ信じる道が違うし、そのどれも簡単には実現できるものではありません。そういう時に、本質的なところを徹底的につきつめず、安易に実現可能な道を探ると正しい落とし所は決して見つかりません。その本質的なところって、商品の場合には専門性とは無関係で、下手に制約条件を知らない素人の目線の方がブレない事も多い。

ですから、GROOVE Xも、ロボットのプロばかり集めるのではなく、いろいろなバックグラウンドの人たちが集まって、自由に意見を言い合える会社にする事を意識してきています。今のところ、メンバーの経歴は多様です。元ダンサーから老人ホームで働いていた経歴の持ち主までいて、それぞれ活躍しています。年齢も下は10代から上は60代まで、多様なんです。

10代の社員もいるんですか?

林:10代の子はバイトですが、優秀です。ペアを組んでいるのが大手メーカーをリタイヤされた60代のベテラン。ベテランの知識と10代の突破力や柔軟さ、お互い守備範囲が違うわけです。この二人が楽しそうにやっているので、それを見るこちらも嬉しくなりますね。多彩なバックグラウンドを持った人たちが集まると、視点が固定化されなくて、いろんな目線から見えて、グルーブ感を出して行く環境づくりにつながっていると思います。

もっとも、立ち上がったばかりのベンチャーで、都合よくぴったりの人に来ていただくのはそう簡単ではありません。これまでは、「いい人がいるよ」とご紹介いただいて、人が人を呼ぶかたちで集まってきたというのが正直なところです。今後スケールしていく中では通常の採用をかけていく機会も出てくる事になるかと思います。そんな時にも、今のGROOVE Xのグルーヴ感を大切にできる仲間に集まって欲しいので、なるべく多くの現メンバーに会って貰うなど、採用には手間をかけていこうと思っています。

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